今回紹介する論文は、中国語教育第15号(中国語教育学会2017年3月)に掲載されておりました、大東文化大学の安藤好恵准教授の「日本の大学における中国語専攻学習者の資格試験に対する動機づけ」です。安藤教授は現代中国語文法を専攻とされていて、できるだけ回り道をしなくてすむように、効果的な中国語学習法について模索されています。この論文では日本国内において中国語を専攻する大学生2~4年生を対象に、中国語資格試験に関する動機づけを調査し、受験者の動機づけ要因を解明することを目的としています。
中国語の資格試験を受験するポジティブな理由としては、「就活に有利だから」、「仕事で使いたい」、「中国語のレベルを上げたい」、「中国語を学んだ証明が欲しい」などが挙げられましたが、受験しない学生の理由としては、「興味がない」、「勉強したくない」、「バイトが忙しい」などが挙げられていました。このアンケートは中国語を専攻とする大学生を対象としているので受験しない学生の理由はちょっと酷いようにも思いますが、必ずしも中国語専攻だからといって、中国語を学習することに積極的なわけではなさそうです。
中国語の資格試験には主に中検とHSKがありますが、学生の考える就活に有利な級は、中検では2級、HSKでは4級・5級以上という結果になっています。HSKは級が高い方が難易度が高く中検と逆なので、難易度を互角している解答も複数あったようですが、私も受験した印象としては、中検2級・HSK5級以上であればしっかり中国語を勉強していると言えるように思います。
また、資格試験を受験した人は、受験していない人と比べて動機づけの内発因子・実利志向因子・努力志向因子・関係性志向因子の4因子が有意に高いことが確認できました。これは、受験した人の方が「中国語の学習は面白い」・「資格試験にチャレンジすることは楽しい」(内発因子)、「資格は就職活動に必要だ」・「将来中国語を使う職業に就くことを希望している」(実利志向因子)、「合否にかかららずチャレンジすることが重要だ」・「チャレンジすることで人間的に成長できる」(努力志向因子)、「みんなが受験するから」、「中国語学科なのに資格を持っていないと恥ずかしい」などの考えを持っている割合が多いことを示しています。わざわざ資格試験に挑戦する事を考えると中国語学習に対する意識も高いと思いますから、納得の結果だと思います。
4因子のうち、内発因子と実利志向因子においては2年生の方が4年生に比べて有意に高かったそうで、内発因子は学習への興味や有能性の認知に関係することから、4年生の方が学習の難易度が上がるにつれて、限界を感じたり、語学能力に限界を感じたり、否定的な評価を受ける機会が多くなることが原因の可能性があるようです。また、実利志向因子においては2年生は就職活動や卒業後の進路について、必要な語学力を明確に把握できていないためのようです。
論文によると2~4年生の学習内容は中級レベルに終始するとのこと。中国語学習者はさまよえる中級者が多いと言われています、今回の論文は調査校が1校のみではありますが、学習意欲を維持するためには資格試験はモチベーションの1つになりそうですが、目標設定や学習環境からのサポートも重要なようです。